こんにちは!大家さんの悩みを解決する管理会社、LivingTokyoの澤田おさむです。
鍵交換は新しい借主が決まった時点で、借主に費用を負担してもらっていると思います。ですが、最近では鍵交換費用の負担を拒否する方がいたり、トラブルも聞くようになりました。
大家さん
鍵交換の負担は大家じゃないの?と言われ困った
そこで、鍵交換の費用は誰が負担すべきなのか?よく挙げられるガイドラインとはどのようなものなのか?トラブルを防ぐためにできることは?などについて、弊社代表の倉川に聞いてきました。
倉川
トラブルにならないために、ぜひ知っておいてください
もくじ
入居時の鍵交換費用が借主負担な理由|絶対に借主が負担するものではない
安全面を考えると入居者さんが変わるごとに鍵を交換するのは当たり前です。ですが、よく考えてみると、鍵は物件の設備のひとつと考えられます。それをなぜ入居者さんの負担で交換するのでしょうか。
理由はとても単純で、不動産賃貸業界で古くから続いている慣習だからです。この業界は慣習が根強く残っており、礼金や更新料なども慣習として残っています。
倉川
なので更新料や礼金も地域や大家さんによって、必要かどうかや金額にばらつきがあります
民法上も契約は自由で、お互いが合意すれば契約が成立することから、入居者さんが鍵交換費用を負担する契約を結べば問題はないはず。しかし、鍵交換費用の支払いを拒む入居希望者がいたり、中には国交省のガイドラインに反するのではないかと指摘されたりするという話も聞くようになりました。
国土交通省の原状回復ガイドラインでは鍵交換費用の負担は原則として貸主|それでも借主負担でいい理由
入居者側から指摘の根拠としてあげられるガイドラインとは、国土交通省が出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。ガイドラインには、鍵の取替えは「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。」と記載されています。(※参照 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」P.21)
では、鍵交換費用は大家さんが負担しないといけないのか?というとそうではありません
それは以下の2つの理由があります。
- あくまでも原状回復についてのガイドラインであること
- ガイドラインは一般的な基準をまとめたものであり、最終的には契約内容に沿って個別に判断されるべきものであること
原状回復のガイドラインであり、入居時のガイドラインではない
このガイドラインは「原状回復」についてまとめられたものです。鍵交換費用を請求しているのはあくまでも入居時。そのため、このガイドラインがそのまま当てはまるわけではありません。
倉川
中には退去時に鍵交換費用を請求している物件もあるようです
原状回復は契約時の費用と違い、契約後に想定外の費用がかかることでトラブルが多発しています。
契約時にわかっていれば入居者が断ることができたものが、契約終了時に初めてわかったとなると、その時点で契約をなかったことにはできません。そのため、このようなガイドラインの整備が進められたという背景があります。
倉川
だからガイドラインの基準がそのまま入居時には当てはまらない可能性があります
ガイドライン上でも最終的には個別に判断されるべきとされている
ガイドライン内にはこのガイドラインの位置づけとして、以下の3つのことが記載されています。
- 一般的な基準をとりまとめたものであること
- 強制するものではないこと
- 最終的には個別に判断されるべきものであること
一般的な基準としてはガイドラインのようになっているが、あくまでも民間の取引である以上、それを強制することはできないというのが、ガイドラインのスタンスです。
民間賃貸住宅の賃貸借契約については、契約自由の原則により、民法、借地借家法等の法令の強行法規に抵触しない限り有効であって、その内容について行政が規制することは適当ではない。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
そのため、ガイドラインに反していたとしても、それがただちに無効になるわけではありません。
鍵交換の費用トラブルを防止するためにやるべきこと
ここまで確認してきたように、鍵交換の費用を借主負担にすることは問題ありません。大事なのは、あとでトラブルにならなようにしておくことです。
過去には、鍵交換費用を借主負担にする特約が無効だとして争われた裁判例があります(※清掃費用負担特約並びに鍵交換費用負担特約について消費者契約法に違反しないとされた事例)。
その判決文から読み取れる、トラブルを防止するためのポイントは以下の2つです。
- 書面に記載、口頭で説明をして合意を取る
- 費用の負担額が著しく高くないこと
書面に記載し、口頭でも説明をして合意をとる
ガイドラインで触れられていたように、契約を結べばガイドラインに反しても直ちに問題にはなりません。そのため、鍵交換の費用を「何円」「借主が負担する」ということを契約内容に盛り込む必要があります。場合によっては、特約として結んでいるケースもあります。
記載してある内容について、口頭でも説明をして合意をとることが大切です。
費用の負担額が著しく高くないこと
鍵交換の費用には、
- 鍵の本体代金
- 技術料
- 出張料
などがかかります。また、管理会社が見積もりを取得したり業者を手配するために動いているため、そのための費用がかかることも想定されます。
これらを総合して考えたときに、暴利を得るようなあまりにも高い金額を提示している場合には、消費者契約法10条違反として契約が無効になる場合があります。
借主が鍵交換費用の支払いを拒否!こんなときどうする?
大家さん
入居者が鍵交換の支払いを拒否してもめています。こんなときどうすればいいのでしょうか?
弊社が管理をさせていただている物件では、物件ごとに鍵交換が必須かどうかを変えています。例えば、家賃5万円などの比較的家賃が安い物件は、初期費用も安くしたいと思っている入居者さんがいます。
そのような物件では、借主さんから相談があった場合には、鍵交換をしなくてもOKにしています。トラブルの可能性なども伝えながら、借主さんの意向を丁寧に確認することが大事です。
トラブル防止の観点や、人気のある物件などは、無理に交渉をせずに賃貸契約を断ることも選択肢の一つです。
また、契約時に初めて知ると拒否される可能性があるため、募集図面に鍵交換費用を入れて募集をだすようにしています。
倉川
弊社では、大家さんと相談しながら物件に応じて柔軟な対応をしています
鍵交換に関するQ&A
鍵交換の費用が発生しないケースはどんなものがありますか?
鍵交換とは、鍵のシリンダーを新しいものに交換することです。新築物件以外でいうと、少し設定をすると以前の入居者さんの鍵を使えなくできるような特殊なシリンダーがあります。この場合、鍵交換費用が発生しない、またはかなり低額で済む可能性があります。
最近はあまりないですが、シリンダーをいくつも確保しておいて、古いものをローテーションしている物件は、鍵交換費用を請求していない場合も。
鍵交換をしないとどんなトラブルが考えられる?
契約時に渡した鍵をすべて返却してもらったとしても、コピーを取っている可能性があります。その場合、鍵交換をしていないと、以前の入居者がコピーした鍵で侵入できてしまいます。
過去にもそのような事例が発生しているので、できる限り鍵交換するのが安全です。もし、借主の意向で鍵交換をしない場合には、契約書の中にその旨記載をしておくといいでしょう。
2020年4月1日には民法が改正!情報をチェックしてトラブルを未然に防ぐ
ガイドラインの基準では鍵交換は貸主負担ながらも、借主に鍵交換費用を負担してもらうために知っておくべきことややるべきことを紹介しました。管理会社にすべておまかせしている大家さんも、一度内容について確認しておくと安心ではないでしょうか。
2020年4月1日に改正された民法が施行され、賃貸借契約についても一部追記されたものがあります(※法務省「賃貸借契約に関するルールの見直し」)。このように、トラブルが発生しているものについては、今後も法整備が進む可能性があります。
最新の情報が常に入ってくる状態にしておくようにしましょう。
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